2025/10/08
“メタボ=おじさん”じゃない!結局メタボってなに?知っておきたい原因と予防
.jpg)
目次
はじめに
「メタボ」と聞くと、お腹がぽっこり出た中年男性を思い浮かべませんか?
実は、これって大きな誤解なんです。メタボリックシンドロームは年齢や性別に関係なく、誰でもなる可能性があるんです。
厚生労働省の調査を見てみると、ちょっと驚きの結果が出ています。
40歳以上の男性では約2人に1人、女性でも約5人に1人がメタボリックシンドロームか、その一歩手前の状態なんです。思っていたより身近な問題だと思いませんか?
現代は便利になった分、車移動が増えて歩く機会が減ったり、美味しいファストフードが手軽に食べられるようになったりと、メタボになりやすい環境が整ってしまっています。
この記事では、メタボって結局何なのか、どうして起こるのか、そして毎日の生活でできる予防や改善のコツを、医学的な根拠をもとに分かりやすくお話しします。
「最近太った」と感じている方はもちろん、健康でいたいすべての方に読んでいただけたら嬉しいです。
“おじさん”だけじゃない!女性や若い人もなる?
-1024x683.jpg)
実は女性の方がリスクが高くなることも
「メタボ=おじさん」というイメージ、実は間違いなんです。
女性の場合、特に50歳を過ぎると要注意。なぜかというと、女性ホルモンのエストロゲンが減ってしまうからなんです。
このホルモンは内臓脂肪がたまりにくくしてくれる、いわば女性の味方。でも更年期を迎えると分泌が減って、男性と同じように内臓脂肪がつきやすくなってしまいます。
日本内科学会の報告によると、女性の場合、50歳を境にメタボリックシンドロームになる人がグッと増えて、60代になると男性とほぼ同じくらいの割合になるそうです。 また、妊娠中に血糖値が高くなった経験がある方や、生理不順で悩んでいる方(多嚢胞性卵巣症候群という病気の可能性もあります)は、将来メタボリックシンドロームになりやすいという研究結果もあります。心当たりがある方は、普段から気をつけておくと安心ですね。
20代・30代でも油断は禁物
最近気になるのが、若い世代でもメタボ予備群が増えていること。20代や30代だから大丈夫、なんて思っていませんか?
若い人がメタボになりやすくなった理由はいくつかあります。
- 食べ物の変化:コンビニ弁当や外食が増えて、野菜不足になりがち
- 動かない生活:デスクワークが中心で、スマホを見る時間も長くて、気がつくと一日中座りっぱなし
- ストレス社会:仕事のプレッシャーや人間関係のストレスで、体にも影響が出やすい環境
- 睡眠不足:夜更かしが当たり前になって、体のリズムが乱れがち
日本肥満学会の調査では、20代男性の約15%、30代男性の約25%がメタボリックシンドロームの予備群だという結果も出ています。若いから大丈夫ではなく、今からケアしていくことが大切ですね。
メタボって結局なに?
-1024x683.jpg)
メタボリックシンドロームの正体
メタボリックシンドローム(略してメタボ)とは、簡単に言うと「お腹周りに脂肪がたまって、血圧や血糖値、脂肪の数値に異常が出てきた状態」のことです。
2005年に日本の8つの学会が力を合わせて作った診断基準があります。これがあることで、お医者さんも私たちも「メタボかどうか」が分かりやすくなったんです。
まず必ずクリアしないといけない条件
★お腹周り(ウエスト)
・男性85cm以上
・女性90cm以上
プラス以下の3つのうち2つ以上当てはまったらメタボ
①中性脂肪の異常
・中性脂肪が150mg/dL以上
・または、善玉コレステロール(HDL)が40mg/dL未満
②血圧が高め
・上の血圧が130mmHg以上
・または下の血圧が85mmHg以上
③血糖値が高め
・空腹時の血糖値が110mg/dL以上
この基準は日本人の体型に合わせて作られているので、海外の基準とはちょっと違います。
例えば、女性のウエスト基準が海外より厳しめなのは、日本人女性は比較的小柄でも内臓脂肪がたまりやすいという特徴があるからなんです。
内臓脂肪と皮下脂肪、何が違うの?
脂肪には2種類あるって知っていますか?メタボで問題になるのは「内臓脂肪」の方です。
内臓脂肪
- お腹の中の内臓の周りにつく脂肪
- 比較的つきやすく、落ちやすい
- 悪いホルモンを出して、生活習慣病の原因になりやすい
皮下脂肪
- 皮膚の下につく脂肪(二の腕や太ももなど)
- 一度つくとなかなか落ちにくい
- 健康への悪影響は内臓脂肪ほどではない
つまり、見た目はそんなに太っていなくても、お腹周りに内臓脂肪がたまっていると要注意ということなんです。これが「隠れメタボ」と呼ばれる状態です。
メタボになる原因とは?
-1024x683.jpg)
食事が一番の原因
メタボの原因で最も大きいのが、やっぱり食事の問題です。現代の食生活には、メタボになりやすいポイントがいくつもあります。
糖質の摂りすぎに注意
白いご飯、パン、うどんなどの精製された炭水化物ばかり食べていると、血糖値がジェットコースターのように急上昇・急降下を繰り返します。すると体は「糖分を脂肪として蓄えなきゃ!」と判断して、内臓脂肪がどんどんたまってしまうんです。
ジュースやお菓子に含まれる砂糖も要注意。500mlのペットボトル1本に角砂糖15個分くらいの糖分が入っているものもあるんですよ。
脂肪の質にも気を配って
揚げ物や加工食品に多く含まれるトランス脂肪酸は、血液中の中性脂肪を増やしてしまいます。一方で、魚やナッツに含まれる良い脂肪は、逆に体に良い働きをしてくれます。
食べる時間も大事
-1024x768.jpg)
夜遅くに食べると、体は「休息モード」に入っているので、食べたものがそのまま脂肪になりやすくなります。「夜中のラーメン」が太りやすいのは、このためなんです。
運動不足の現実
昔の人は歩いて移動するのが当たり前でしたが、今は車や電車での移動が中心。加えてデスクワークが増えて、一日中座りっぱなしという人も多いですよね。
厚生労働省の調査によると、成人の1日平均歩数は男性約7,000歩、女性約6,000歩。理想とされる8,000~10,000歩には全然届いていません。
運動不足が続くと、こんな悪循環に陥ります。
- 筋肉が減る
- 基礎代謝が下がる(何もしなくても消費されるカロリーが減る)
- 血糖値を下げる機能が落ちる
- 内臓脂肪がたまりやすくなる
ストレスも大きな要因
-1024x683.jpg)
現代社会はストレスだらけ。仕事のプレッシャー、人間関係、経済的な不安など、気がつかないうちにストレスをため込んでいませんか?
慢性的なストレスを受けると、副腎という臓器から”コルチゾール”というホルモンが多く分泌されます。このホルモンには以下のような困った作用があります。
- 血糖値を上げる
- インスリンの働きを悪くする
- お腹周りに脂肪をため込みやすくする
- 血圧を上げる
- 食欲を増す(特に甘いものや脂っこいものが欲しくなる)
ストレス食いという言葉があるように、ストレスがたまると無意識に食べ過ぎてしまうことも多いんです。
睡眠不足も侮れない
夜更かしが当たり前になっている現代人。でも睡眠不足もメタボの立派な原因なんです。
睡眠時間が6時間未満の人は、7~8時間の人と比べてメタボリックシンドロームになるリスクが約1.6倍高いという研究結果があります。
睡眠不足になると、食欲に関係するホルモンのバランスが崩れます。
- グレリン(お腹すいたホルモン)が増える
- レプチン(お腹いっぱいホルモン)が減る
- 成長ホルモンの分泌が減る
- 血糖値を下げる力が弱くなる
つまり、睡眠不足だと「お腹が空いて仕方ない」「食べても満腹感がない」「代謝が悪い」という三重苦になってしまうんです。
放っておくとどうなるの?メタボの怖い合併症
-1024x764.jpg)
心臓や脳の血管が危険に
メタボを放っておくと、一番怖いのが心臓や脳の病気です。日本循環器学会の報告によると、メタボの人はそうでない人と比較してこんなに高くなってしまうんです。
- 心筋梗塞になるリスクが約3倍
- 脳梗塞になるリスクが約2.5倍
- 心臓や血管の病気で亡くなるリスクが約2倍
これらが組み合わさって、血管が詰まったり破れたりしやすくなります。
糖尿病への一直線コース
-1024x683.jpg)
メタボの人が2型糖尿病になるリスクは、健康な人の約5~6倍。これは内臓脂肪から出る悪い物質が、血糖値を下げるインスリンの働きを邪魔するからなんです。
糖尿病が進行すると、こんな怖い合併症が起こる可能性があります。
- 糖尿病性網膜症: 目の血管が傷つき、最悪失明することも
- 糖尿病性腎症: 腎臓の機能が落ちて、人工透析が必要になることも
- 糖尿病性神経症: 足の感覚がなくなり、傷に気づかずに切断が必要になることも
肝臓にも脂肪がたまる
内臓脂肪がたまると、肝臓にも脂肪がたまりやすくなります。これを非アルコール性脂肪肝といいます。
お酒を飲まないのに肝臓に脂肪がたまるなんて意外ですよね。日本肝臓学会によると、メタボの人の約70~80%に脂肪肝が見つかり、そのうち10~20%は将来肝硬変や肝がんに進行する可能性があるそうです。
いびきがひどくなることも
内臓脂肪がたまると、のどの周りにも脂肪がついて気道が狭くなります。すると睡眠時無呼吸症候群という病気になりやすくなります。
この病気になるとこんな問題が起こる可能性があります。
- 昼間眠くて仕方ない
- 集中力が続かない
- 血圧がさらに上がる
- 心不全のリスクが高まる
- 居眠り運転などの事故の危険性も
今日からできる!メタボ予防・改善のヒント
-1024x768.jpg)
食事で気をつけたいポイント
難しいことを考える必要はありません。まずは身近なところから始めてみましょう!
食事の基本は「バランス」
- 主食(ご飯、パン、麺): 全体の半分程度
- 主菜(肉、魚、卵、豆腐): 手のひら1枚分
- 副菜(野菜、きのこ、海藻): 両手に山盛り1杯分
今日からできる食事のコツ
白いものから茶色いものへシフトチェンジ!
- 白米→玄米 / 分づき米(ぶづきまい:玄米と白米の中間段階の精米状態のお米のことです。)
- 食パン→全粒粉パン
- うどん→そば
いきなり全部変えるのは大変なので、白米に麦を混ぜるところから始めても良いですね。
野菜から食べる「ベジファースト」
最初に野菜やサラダを食べると、血糖値の急上昇を抑えられます。外食の時でも、まず付け合わせのキャベツから食べるだけでOKです!
良い脂肪を選ぼう
おすすめ:魚(特にサバ、サンマ、イワシ)、オリーブオイル、アボカド、ナッツ
控えめに:揚げ物、お菓子、マーガリン
お腹いっぱい食べられる食材
- 野菜、きのこ、海藻類は低カロリーで食物繊維も豊富
- こんにゃくや寒天を使った料理もおすすめ
- 野菜は1日350g以上が目標(小鉢5つ分くらい)
運動のハードルを下げよう
-1024x767.jpg)
「運動しなきゃ」と思うとプレッシャーを感じますが、まずは体を動かすことから始めましょう。
日本糖尿病学会や日本肥満学会では、以下の運動をすすめています。
有酸素運動(息が少し上がる程度の運動)
- 週150分以上が目標(1日約20分)
- ウォーキング、水泳、自転車こぎなど
- 10分×3回でも、30分×1回でもOK
筋トレ
- 週2回以上
- 腹筋、背筋、スクワットなど大きな筋肉を使う運動
- ジムに行かなくても、家でできる簡単なものから
日常生活で工夫
- エレベーターより階段を使う
- 電車では座らずに立つ
- 一駅手前で降りて歩く
- テレビを見ながらストレッチ
- 1時間に1回は立ち上がる
運動が苦手な人は、まず「今日は5分多く歩こう」「階段を使ってみよう」など、小さな目標から始めてみてください。
生活習慣を整えよう
質の良い睡眠のために
- 7~8時間の睡眠時間を確保
- 寝る前のスマホやテレビは控えめに
- 寝室は暗く、静かで、少し涼しめに
- 毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きる
お酒とタバコについて
- タバコは血管に悪影響を与えるので、できれば禁煙を
- お酒は適量まで(ビール中瓶1本、日本酒1合程度)
- 週に2日以上は「休肝日」を作る
定期的なチェックを習慣に
家庭でできること
- 毎日同じ時間に体重測定(朝起きてトイレの後がおすすめ)
- 月に1回はウエスト周りを測る(おへその位置で)
- 血圧計があれば、朝と夜に測定
年1回は健康診断を!
- HbA1c(過去1~2ヶ月の血糖値の平均)
- 中性脂肪
- HDLコレステロール(善玉)
- LDLコレステロール(悪玉)
これらの数値に異常があったら、早めにかかりつけ医に相談しましょう。
生活習慣の改善でも十分でない場合
-1024x681.jpg)
食事や運動などの生活習慣を改善しても数値が改善しない場合は、医師の判断により薬による治療が検討される場合があります。ただし、薬だけに頼るのではなく、生活習慣の改善と組み合わせることが重要です。
治療薬には以下のようなものがありますが、必ず医師の診断と指導のもとで使用することが必要です。
- 血圧を下げる薬
- コレステロールを下げる薬
- 血糖値を下げる薬
これらの薬については、自己判断せず、必ず医療機関で相談してください。
まとめ
-1024x683.jpg)
メタボリックシンドロームは「太ったおじさん」だけの問題ではありません。女性も若い人も、誰もがなる可能性がある現代病です。でも、正しい知識と適切な対策があれば、予防も改善も十分可能なんです。
内臓脂肪がたまることで起こる様々な体の不調。放っておくと心臓病や糖尿病などの深刻な病気につながる可能性がありますが、毎日の小さな積み重ねで改善していくことができます。
今日から始められること
1. 食事:バランスよく、野菜をたっぷり、食べる順番も意識して
2. 運動:無理せず、まずは今より5分多く体を動かすことから
3. 睡眠:7~8時間の質の良い睡眠を心がけて
4. ストレス:上手に息抜きして、一人で抱え込まない
5. チェック:定期的な体重測定と年1回の健康診断
完璧を目指す必要はありません。「今日はちょっと歩いた」「野菜を意識して食べた」「早めに寝た」など、小さな変化を積み重ねることが大切です。
メタボリックシンドロームについて気になることや、健康診断の数値で心配なことがあれば、一人で悩まずに医療機関で相談してくださいね。専門家のアドバイスを受けながら、健康で楽しい毎日を過ごしていきましょう。
あなたの健康は、あなた自身とあなたを大切に思う人たちにとってかけがえのないものです。今日という日を、健康な未来への第一歩にしてみませんか?
※注意事項※
本記事は一般的な健康情報の提供を目的としており、個別の診断や治療の指示を行うものではありません。体調に不安がある場合や、健康診断の数値に異常がある場合は、必ず医療機関を受診し、医師にご相談ください。また、薬による治療については、必ず医師の診断と指導のもとで行ってください。
出典:参考資料
・厚生労働省「令和元年国民健康・栄養調査結果の概
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_14156.html
・日本内科学会「メタボリックシンドローム診断基準検討委員会」(2005)
https://www.naika.or.jp/jsim_wp/wp-content/uploads/2015/09/metabolic.pdf
・日本肥満学会「肥満症診療ガイドライン2016」
http://www.jasso.or.jp/contents/magazine/journal.html
・日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2019」
http://www.jds.or.jp/modules/education/index.php?content_id=11
・日本肝臓学会「NAFLD/NASH診療ガイドライン2020年版」
https://www.jsge.or.jp/committees/guideline/guideline/pdf/nafldnash2020_2_re.pdf