株式会社ICST

酸素濃縮の方法

酸素濃縮器は、空気から高濃度の酸素を取り出す装置のことです。大気中の酸素濃度は通常、約21%です。この空気から酸素以外の成分を取り除くことで、高い酸素濃度の空気を生成するのが一般的な酸素濃縮器の原理です。

なお、このほかにも、化学的な方法によって水から酸素を分離するものもあります。ただ、こうしたものは、薬剤と水が必要となりますので、コストや手間がかかります。こうした化学式の酸素発生装置と区別するため、ここでは酸素濃縮器という名称で説明します。

現在使われている酸素濃縮には、大きく分けて次の3つがあります。

PSA方式
(Pressure Swing Adsorption)

 PSA方式は、吸着式(吸着型)とも呼ばれ、ゼオライトというセラミックを使用します。 ゼオライトは沸石とも呼ばれる天然鉱物で、触媒や脱臭などの用途にも広く使用されていますが、 PSA方式では、ゼオライトの窒素を吸着するという特性を使って高濃度酸素を作り出します。

 すでに述べたように、ゼオライトは、圧力を高めたときにより多くの窒素を吸着するという特徴があります。 PSA方式のプロセスについて説明しましょう。ゼオライトを内張りしたシリンダーに高圧にした空気を送り込みます。 すると、空気中の窒素がゼオライトに吸着します。その状態で内部の気体を排出すると、結果的に窒素濃度の下がった、つまり、酸素濃度の高い空気ができあがるわけです。 高濃度酸素を含む気体を排出した後でシリンダー内を減圧すると、ゼオライトに吸着した窒素が離れます。 それは、別に排気します。ちなみに、窒素を取り出す場合は、減圧後に残る気体を取り出します。 通常は、シリンダーを2基搭載して、交互に加圧・減圧を繰り返します。 原理的にはシリンダーの数を増やしていけば、より効率よく高濃度酸素を取り出すことが可能です。 しかし、数が増えることでシリンダー間の加圧・減圧のタイミングをコントロールするのが難しくなりますから、現在は2基が主流となっています。

PSA方式

PSA方式は、古くからある酸素分離方式で、窒素ガス製造業者などでも広く用いられています。 加圧・減圧を繰り返すため、動作音が高く、シューシューという音が目立ちます。 また、ゼオライトには特定の臭気があるため、排出されたガスに少し臭いがついてしまうという欠点もあります。

酸素富化膜方式

 これは、酸素富化膜という特殊な膜を使って酸素と窒素を分離する方式です。 酸素富化膜は気体分離膜とも呼ばれ、酸素以外にもエチレンや水蒸気の分離も行うことのできる用途の広い物質です。 酸素富化膜は、膜に穴が開いていてそこに分子を通すというものではなく、膜に気体の分子が溶け込むという性質を持った膜です。 膜の出口を減圧すると、気体の分子(酸素分子、窒素分子)が膜側に引っ張られて膜に溶け込み(溶解)、膜内に拡散、膜の減圧側に離脱します。 そのときに、酸素のほうが窒素よりも膜を通り抜ける速度が速いため、減圧側で取り出した空気の酸素濃度が高くなります。

酸素富化膜方式

 なお、膜には穴が開いているわけではないため、細菌やウィルスは通り抜けることができませんから、清浄な高濃度酸素を得ることができるというのも、酸素富化膜方式の特徴になっています。 ただ、酸素富化膜は高圧にして膜に押し込むのではなく、出口側を低圧にして空気を引き出す方法をとっているため、比較的高価なバキュームポンプが必要となります。

中空糸膜方式

 中空糸は、ストロー状(中空)になった糸のことで、浄水器のフィルターなどに使われているほか、 糸の中空部分に暖かい空気を保持できることから、保温性のある衣料品の繊維としても使用されています。

中空糸膜方式

 酸素濃縮器用の中空糸膜は、酸素を通しやすい特性の素材が使用されています。 酸素濃縮器では、一般にシリンダー状の膜モジュールを使用します。 膜モジュールには、中空糸膜が束ねて収められていて、シリンダーの一方の端から圧縮空気をいれると、 酸素、二酸化炭素などの分子径の小さい分子は膜の外側に排出され、分子径の大きい窒素はそのまま中空糸内を通り抜けて、 中空糸の反対側から排出されます。 膜モジュールの側面から出てきた気体を集めると、酸素濃度の高い空気が得られるというわけです。

透過膜による気体の分離について

 酸素富化膜や中空糸膜といった高分子膜による気体の透過機構については、現在「溶解拡散機構説」が主流となっています。 これは、膜に空孔がないという前提で展開される説で 、膜の高圧側の表面から気体が溶解し、膜中で拡散し、低圧側で離脱する、という過程で気体の膜透過を説明しています。 このとき、分子によって透過する速度が異なるという性質があり、気体分離はこの性質を利用しています。酸素分離を例にとると、酸素は窒素より速く膜を透過します。 そのため、膜を通り抜けてきた気体を集めることで、より酸素の多い、つまり酸素濃度の高い空気を得ることができるというわけです。

透過膜による気体の分離について

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