2025/12/10
「骨粗しょう症」は予防できる!骨を強くする習慣とポイントを紹介
目次
はじめに
日本では約1,300万人もの骨粗しょう症患者が存在すると推定されています。特に女性は閉経後にエストロゲンという女性ホルモンの分泌が減少することで、骨密度が急速に低下しやすくなります。
骨粗しょう症は自覚症状が少ないため、気づかないうちに進行し、ちょっとした転倒でも骨折してしまうことがあります。
2025年には、日本骨粗鬆症学会によって『骨粗鬆症診療ガイドライン』が10年ぶりに改訂されました。最新の知見に基づいた予防と治療の重要性が改めて示されています。
骨の健康は、将来の生活の質を守るための大切な要素です。本記事では、骨粗しょう症とは何か、そして日々の生活の中で実践できる予防のポイントをわかりやすく解説いたします!
骨粗しょう症とは?
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骨粗しょう症とは、骨の強度が低下して骨折しやすくなる病気です。骨はカルシウムやリンなどのミネラルで構成されており、骨密度が低下すると骨の中が空洞化してもろくなります。
骨密度と基準値について
骨密度の評価には「YAM値(若年成人平均値)」が使用されます。
これは20歳から44歳(大腿骨近位部では20歳から29歳)の健康な成人の骨密度平均値を100%として、現在の骨密度がその何%にあたるかを示す指標です。
日本における骨粗しょう症の診断基準は以下の通りです。
- YAM値80%以上:正常
- YAM値70%以上80%未満:骨量減少(骨粗しょう症予備群)
- YAM値70%未満:骨粗しょう症
骨粗しょう症になりやすい人
以下のような方は骨粗しょう症のリスクが高いとされています。
- 閉経後の女性
- 65歳以上の高齢者
- 家族に骨粗しょう症や大腿骨骨折の既往がある
- 過去に骨折経験がある
- 極端なダイエットや偏食をしている
- 運動不足の生活を続けている
- 喫煙や過度の飲酒習慣がある
放っておくとどうなるの?
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骨粗しょう症を放置すると、日常生活に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
骨折のリスク
骨粗しょう症で最も問題となるのは骨折です。特に以下の部位での骨折が起こりやすくなります。
脊椎圧迫骨折
背骨が圧迫されてつぶれる骨折。慢性的な腰痛や背中の曲がり、身長の低下を引き起こします。
大腿骨近位部骨折(股関節の骨折)
転倒などで起こりやすく、手術が必要になることが多い骨折です。
橈骨遠位端骨折(手首の骨折)
転倒時に手をついた際に起こりやすい骨折です。
生活の質への影響
骨折は単なる怪我ではありません。特に大腿骨骨折を経験すると、約50%の方が歩行障害を残し、約25%の方が寝たきりになるという海外の報告もあります。骨折により身体活動が制限されると、筋力の低下や転倒リスクがさらに高まり、再び骨折する「骨折の連鎖」を引き起こす可能性があります。
また、骨折による入院や手術は精神的な負担も大きく、介護が必要になることで家族にも影響を及ぼします。骨粗しょう症の予防は、将来の健康寿命を守るための重要な取り組みなのです。
今日からできる骨を守る生活習慣
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骨粗しょう症の予防には、日常生活の中で実践できる習慣があります。食事、運動、日光浴の3つの柱を中心に取り組みましょう。
「食事」で骨を作る栄養素を意識!
骨の健康には、バランスの良い食事が基本です。その上で、以下の栄養素を意識的に摂取しましょう。
カルシウム
カルシウムは骨の主要な構成成分です。骨粗しょう症の予防と治療においては、1日700〜800mgの摂取が推奨されています。
カルシウムを多く含む食品
- 乳製品(牛乳、ヨーグルト、チーズ)
- 小魚(干しエビ、しらす、煮干し)
- 大豆製品(豆腐、納豆)
- 緑黄色野菜(小松菜、ほうれん草、春菊)
- 海藻類(ひじき、わかめ)
牛乳は吸収率が高く、コップ1杯(200ml)で約220mgのカルシウムが摂取できます。乳製品が苦手な方は、小魚や野菜、大豆製品を組み合わせて摂取するとよいでしょう。
ビタミンD
ビタミンDは、腸管からのカルシウムの吸収を促進し、血液に入ったカルシウムを骨まで運ぶ働きがあります。骨粗しょう症予防のためには、1日15〜20μg(600〜800IU)の摂取が推奨されています。
ビタミンDを多く含む食品
- 魚類(サケ、サンマ、イワシ、ブリ、マグロ)
- きのこ類(干ししいたけ、きくらげ、まいたけ)
※きのこ類は調理前に2〜3時間日光に当てることで、ビタミンD含量がさらに増加します。
ビタミンK
ビタミンKは、カルシウムが骨に取り込まれるのを促進し、骨の形成を助けます。骨粗しょう症予防のためには、1日250〜300μgの摂取が推奨されています。
ビタミンKを多く含む食品
- 納豆
- 緑黄色野菜(小松菜、ほうれん草、春菊、ブロッコリー)
避けるべき食品は?
以下の食品はカルシウムの吸収を妨げるため、過剰摂取には注意が必要です。
- リンを多く含む食品(インスタント食品、スナック菓子、加工食品)
- 塩分の多い食品
- カフェインを多く含む飲料
- アルコール
「運動」で骨に刺激を与えよう!
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運動は骨密度の維持・向上に効果的です。
骨に物理的な刺激が加わることで、骨を作る細胞(骨芽細胞)が活性化し、カルシウムが骨に沈着しやすくなります。また、筋力とバランス感覚が向上することで、転倒による骨折の予防にもつながります。
おすすめの運動
①ウォーキング
最も手軽で効果的な運動です。重力がかかる陸上での運動が骨密度向上に適しています。
頻度:週3回以上
時間:1回30分以上(約3,000歩が目安)
ポイント:姿勢を正しく、やや大股で歩く
◎日中に行うことで、ビタミンDの合成も促進されます。
②筋力トレーニング
骨に直接刺激を与える運動です。
スクワット:下半身の筋力強化
片足立ち:バランス感覚の向上
かかと上げ:ふくらはぎの強化
◎自分の体重を利用した運動や、軽いダンベルを使った運動から始めましょう。
③その他の運動
ジョギング(体力に応じて)
ラジオ体操
太極拳
ヨガ
運動時の注意点
すでに骨粗しょう症と診断されている方や骨折経験のある方は、医師に相談してから運動を始めましょう。
※無理のない範囲で、徐々に運動強度を上げていきましょう。
※転倒に注意し、安全な環境で行いましょう。
※運動前後のストレッチを忘れずに行いましょう。
「日光浴」で体内でビタミンDを作る!
ビタミンDは、紫外線を浴びることで皮膚でも生成されます。適度な日光浴は骨の健康に役立ちます。
目安の時間
- 夏:木陰で30分程度
- 冬:直射日光で30分〜1時間程度
手のひらや腕など、体の一部を日光に当てるだけでも効果があります。ただし、過度な日光浴は皮膚にダメージを与えるため、適度な時間を心がけましょう。
その他の生活習慣
- 禁煙:喫煙は骨密度の低下を促進します
- 適度な飲酒:過度の飲酒はカルシウムの吸収を妨げます
- 適正体重の維持:極端に痩せすぎると骨密度が低下します
- 転倒予防:家の中の段差をなくす、滑りにくい履物を選ぶなど
検査で「骨の状態」を知る
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骨粗しょう症は自覚症状が少ないため、定期的な検査で骨の状態を把握することが重要です。
骨密度検査 骨密度を測定する方法はいくつかありますが、最も精度が高く推奨されているのが*DEXA法(DXA法、デキサ法)*です。
DEXA(デキサ)法とは?
・2種類の微量なX線を照射して骨密度を測定
・骨折しやすい腰椎と大腿骨近位部を直接測定できる
・日本骨粗鬆症学会のガイドラインでも推奨されている標準的な検査方法
・測定時間は5〜10分程度と短く、痛みもない
・被ばく量は胸部X線検査の約1/3〜1/6程度と少ない
検査を受けるタイミング
以下に該当する方は、骨密度検査を受けることをおすすめします。
- 女性:40歳以降、特に閉経前後
- 男性:50歳以降
- 骨折経験がある
- 家族に骨粗しょう症や大腿骨骨折の既往がある
- 身長が低くなった、背中が丸くなった
- 腰痛や背中の痛みがある
検査を受けられる場所
骨密度検査は、整形外科やリハビリテーション科を標榜する医療機関、健診センターなどで受けることができます。DEXA(デキサ)法を実施しているかどうかは、事前に医療機関のホームページで確認するか、電話で問い合わせることをおすすめします。
検査費用
保険適用の場合、DEXA(デキサ)法による骨密度検査は自己負担割合にもよりますが、約500円〜1,500円程度で受けられます。自治体によっては骨粗しょう症検診を実施しているところもあるため、お住まいの自治体に確認してみましょう!
血液検査・X線検査
骨密度検査に加えて、以下の検査が行われることがあります。
- 血液検査:骨代謝マーカーを測定し、骨の新陳代謝の状態を評価
- X線検査:脊椎の骨折の有無を確認
これらの検査を組み合わせることで、より正確な診断と適切な治療方針を決定することができます。
まとめ
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骨粗しょう症は、骨密度が低下して骨折しやすくなる病気です。特に閉経後の女性や高齢者に多く見られ、放置すると脊椎圧迫骨折や大腿骨骨折を引き起こし、生活の質を大きく低下させる可能性があります。
しかし、骨粗しょう症は「予防できる病気」です。今日から実践できる予防のポイントは以下の通りです。
- バランスの良い食事:カルシウム(1日700〜800mg)、ビタミンD(1日15〜20μg)、ビタミンKを意識して摂取
- 適度な運動:ウォーキングや筋力トレーニングを週3回以上、1回30分程度
- 日光浴:手のひらや腕を1日15〜30分程度日光に当てる
- 定期的な検査:特に女性は40歳以降、男性は50歳以降にDEXA法による骨密度検査を受ける
骨の健康は、将来の健康寿命を守るための重要な要素です。
自覚症状が少ない病気だからこそ、早めの予防と定期的なチェックが大切です。気になる症状がある方や、健康診断で骨密度が低いと指摘された方は、早めに医療機関を受診しましょう。




